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喜作はふりかへつた。そこへ房一も登りついた。三人は瞬間顔を見合せた。そこに、房一は自分よりは二つ三つ若い、だが禅坊主のやうな頭骨をした精悍な表情の神原喜作を見た。
房一は目を上げて何か訊きたさうにした。それを押へるやうに、
「ふむ。悧巧者だな、お前は」
「あ、お帰んなさい」
房一はいかにもそれがやり切れない、と云つた風に吐き出すやうに云つた。つゞけて、
「あなたは、多分――」
「三人どころぢやない、五人も十人もある」
さう呟くと、小谷は追鮎の力を試すやうに竿を高く上げてみた。彼のきいきい云ふ金属性の声は、こんなひとり言のときでも絶えず房一に向つて話しかけたがつているやうであつた。
「いや、いや」
それが堂本だつた。
上下のシャツだけといふ奇妙な恰好で房一が台所に降りかけた時、はじめて彼はそこに誰か立つているのに気づいた。
と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。
「まあ、――上の町の大石さんとこ位は行つとくのもよからうが」