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    小谷は房一に話しかけた。

    「開業日はいつかの」

    房一は無意識に微笑しながらその眼を迎へた。正文はそこに、医者といふよりはまだ世間慣れのしない弁護士のやうな男が、土饅頭を思はせるやうな円まつちい顔を一種恭々うやうやしげな面持でかしこまつているのを、その厚いふくれた唇が不器用な微笑を浮べているのを見た。それは何となく可笑をかしみのあるものだつた。

    「はあ、それは――」

    「いや、そこまで確かなことにはしませんでしたが」

    「やつぱり徳さんが多いね」

    房一はいくらかつんぼの道平の耳に口を寄せて、大声で云つた。

    「かういふ玩具おもちやのやうなものを出して、年甲斐もないことでした」

    「今晩、寄せてもらつてもえゝですか」

    「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」

    「御機嫌だつたね」

    「畜生、おぼえていろ。」

    房一は満足げに、かへつて来た犬の頭をかるくたゝいた。

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